スポーツ走行では、エンジンは日常生活で使用しない回転域まで回ることが多くなります。
そのため、エンジン自体の温度も通常より高くなってしまいます。エンジンオイルはエンジンのシリンダ内をピストンが滑らかに動けるようにするための潤滑油の役目を果たしており(他にも役割はあるのですが)、これなしにはエンジンは滑らかに動くことはできません。
で、このエンジンオイルですが、いろいろな種類がありまして、それによって性能が違っています。
以下でカー用品店で見かけることができるエンジンオイルの表記について、簡単に説明してみます。
以下に挙げたものの他にもいくつかあるのですが、私は主にこの2点を見てオイルを買ってます。
・SAE 分類
SAE(アメリカ自動車規格協会)が定めたオイルの粘度を分類した規格で、10W-30 などと表示されています。
上の例で言うと、10W が低温側、30 が高温側の粘度を表します。
低温側の数値が低い場合は、温度が低い状態になってもオイルがサラサラの状態を維持できるようになります。TVCMでもバナナで釘が打てる冷凍庫の中でもサラサラですってのがありましたね。寒い地方ではこの数値が低いオイルにしておくと、エンジンがかかりやすくなります。
一方、高温側の数値が高い場合ですが、オイルというものは高温になればなるほどサラサラになっていくのですが、一定の温度を超えるとサラサラになりすぎて潤滑油としての役割を果たせなくなります(油幕が形成できなくなる)。高温側の数値はどのくらいの温度まで潤滑油としての役割を果たせるかを示しています。
ちなみに 10 や 30 の数値ですが、「摂氏(℃)」ではありません。あくまで区分を行なうための数字です。
サーキット走行ではエンジンは非常に高温となりますので、高温側の数値が高いものに交換することになります。
私の車の場合、取扱説明書には 10W-30 を使用すると書かれていますが、現在は 10W-50 というものを常時使用しています。
またサーキット走行に限らず、エンジンオイルは半年に一度くらいは交換しておいた方がいいですよ。後、サーキット走行をした後は早めにオイルを交換しましょう。長時間高温にさらされることになるので、かなり早くオイルが劣化します。
・API 分類
API(アメリカ石油協会)が定めたオイルのグレードです。以前は高性能エンジンへの対応によってランク分けされていましたが、最近は環境に対するレベルによる区分という意味合いが強くなってきました。
よく見かけるグレードとしては、SG、SH、SJ、そして比較的最近に制定されたSLというものでしょうか。
SLが現時点( 2001 年)での最高グレードとなり、高性能エンジンへの対応の他に「リン含有量」や「高温時の酸化防止性能」などの厳しい環境基準をクリアしています。
私が使用しているオイルは以前はSJだったのですが、先日交換しにいったらSLにグレードが上がってました。
ブレーキフルードというのは、ブレーキペダルとブレーキパッドをつないでいるブレーキラインに満たされているオイルのことで、注射器のような原理でブレーキを踏むとその先にあるブレーキパッドが閉じるという仕組みになっています。
ブレーキが効いている間、その摩擦でブレーキパッドはかなりの高温にさらされ、その熱は当然のようにブレーキフルードにも伝わってきます。ブレーキパッド自体には断熱材が入っているので多少のことなら大丈夫なのですが、パッドが減ってきたり激しい走行を続けるとパッドが熱を遮断しきれずにブレーキフルードが高温になり、やがて沸騰してしまいます。
ブレーキフルードが沸騰を始めるとブレーキライン内部に気泡が発生して、これが原因でベーパーロックというブレーキが効かなくなる現象が発生します(これは自動車教習所でも教わると思います)。要するに液体より気体の方が伸縮率が大きいので、ブレーキを踏んでも、気泡が縮むだけでブレーキパッドへ踏んだ力が伝わらないというわけですね。
で、これがなぜ交換対象なのかと言いますと、簡単に言えばこれもエンジンオイルと同様劣化したり、性能に違いがあるためです。
ブレーキフルードは非常に水分を吸収しやすくて、1年くらい経てば3%程度の水分を吸収してしまうらしいです。水分を吸収するとブレーキフルードの沸点が下がり、よりベーパーロックが発生しやすい状態となります。特にサーキット走行の場合にこのベーパーロックが発生すると大事故につながります(もちろん一般道でも大事故になりますけど)。
この3%程度の水分を吸収した時の沸点を「ウェット沸点」と呼び、この沸点がどの程度高いかによってブレーキフルードのグレードが変わってきます。
そのグレードは DOT というもので表され、一般の車には DOT3 というものが使用されており、そのウェット沸点は140℃となっています。
この上のグレードには DOT4, DOT5 などがあり、基本的に数字が大きくなるほどウェット沸点が高くなります(それぞれ、155℃、180℃です)。
そういう意味では DOT5 を入れておけばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、DOT5 は成分が特殊なので、あまり通常の使用には向いていません。サーキット走行の前後に DOT4 以下に入れ直す必要があるので、よほど本格的にされない限りは必要ないと思います。
そんなわけで私は常時 DOT4 を使用しています。これなら街乗りレベルから(それほど激しくない)サーキット走行くらいまで耐えられますので。
最近は一般のカー用品店でも交換してくれるところが多くなりました(昔はやってくれるところを探すのに結構苦労した…自分で交換するのはまだ怖い)ので、安全のために1年に1回くらいは交換しておいた方がいいかもしれません(特に下り坂などでブレーキを多用して走られるような方は)。ブレーキフルードって交換するとブレーキを踏んだ時の感じが結構変わる(フワフワしていたものがしっかりとした感じになる)ので一度お試しを。
サーキット走行をするのであれば、上のブレーキフルードと一緒にこのブレーキパッドも交換しておきましょう。
普通の使用であれば、ブレーキパッドがなくなるなんて状況にはまずならない(なくなる前に車の買い替え時期になってしまう)のですが、サーキット走行となるとそうはいきません。
基本的には1日サーキットを走ればなくなると思っていただければいいでしょうか。私の場合はそこそこ休みながら1日走るのですが、それでも次の走行会の前には交換することにしてます(通常、半分くらいしか減ってないのですが)。
実は私、一度交換せずに走って、ブレーキパッドがなくなった経験があるのです(しかも帰りの高速道路の上で…)。減速しようとブレーキを踏んだらフロントから「ガリガリッ」という嫌な音が聞こえました(汗)。一般の車はフロントブレーキの方が良く効くようになっているので、先にフロントのブレーキパッドがなくなるのです。とっさにギアを4→3→2と落として最悪の事態は回避しましたが(高速道路で2速のエンジンブレーキを使ったのはこれが最初で最後だと思う)。その後、ICを下りて近くにあったカー用品店で交換してもらい事無きを得ましたが、あれも今となってはいい経験です。
と言うことで、ブレーキパッドも減るということです。ブレーキパッドを高速に回転しているローターに押さえつけて止めるのですから当然ですね。
後、知らない方がいらっしゃるかもしれませんので書いておきますが、ブレーキパッドは一定の速さで減ったりしません。パッドが減るに従って減る速度もだんだん速くなっていきます。ですので、2年使ったら半分減ったというパッドなら、もう2年はもたないということになりますのでご注意ください。何事も早め早めの対応が大切です。
ブレーキパッドは各社からいろいろ出ており、しかもこれに関しては車種ごとにまったく違いますので、実際に店で探してもらうしかないですね(私の車のサーキット用パッドは通常店に置かれてないので、毎回注文してます)。街乗りからストリート走行やサーキット走行まで耐えられるものなどいろいろありますので、自分の乗り方に合わせたパッドを選択してください。
余談ですが、最近流行りのRV車ってその車重に対してブレーキパッドが弱いらしいので、1ランク上のものに変えておくといいらしいですよ。